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November 28, 2024

フェスティヴァル・ランタンポレル レ・ヴォルク弦楽三重奏団 et 上野由恵 ベートーヴェン&マヌリ

フェスティヴァル・ランタンポレル●27日は東京文化会館の小ホールへ。野平一郎東京文化会館音楽監督のプロデュースにより立ち上げられた新しいプロジェクト「フェスティヴァル・ランタンポレル」の一公演。このプロジェクトのコンセプトは現代と古典のクロスオーバー。現代音楽の公演は聴衆がすっかり固定的になっているし、古典の公演は同じレパートリーの反復になりがちということで、両者を横断するような音楽祭を開きたいというのが趣旨。同様の狙いを持つフランスのニームのレ・ヴォルク音楽祭、およびIRCAMとの連携で、11月27日から12月1日まで開催される。今回は「ベートーヴェン&フィリップ・マヌリ」と「シューベルト&ヘルムート・ラッヘンマン」という組合せが軸。
●で、この日は「ベートーヴェン&フィリップ・マヌリ」。前半がマヌリの「パルティータI ヴィオラとエレクトロニクスのための」、後半がマヌリの「Silo アルトフルートとヴィオラのための」と「ジェスチャー 弦楽三重奏のための8楽章」、ベートーヴェンの弦楽三重奏曲ハ短調Op.9-3。演奏はレ・ヴォルク弦楽三重奏団(ヴァイオリン:オード・ペラン=デュロー、ヴィオラ:キャロル・ロト=ドファン、チェロ:ロビン・マイケル)、アルトフルートの上野由恵、前半のエレクトロニクスが今井慎太郎、サウンド・ミキシングがフィリップ・マヌリ本人。まあ、こういうマヌリ中心のプログラムなので、客席の雰囲気は現代音楽の公演そのものって感じではあるが、おそらくこの日がもっとも現代音楽寄りで、ほかの日はもう少し古典寄りの客席になるはず。
●前半の「パルティータI ヴィオラとエレクトロニクスのための」は45分くらいある長大な作品。ヴィオラの独奏に対して、これをエレクトロニクスで増幅、変調したサウンドが重なり、追随する。全体は9つの部分からなるというのだが切れ目は明確ではなく、文脈が希薄で、周期的な拍もないので聴きづらいタイプの作品ではあるのだが、部分部分あるいは瞬間瞬間の響きのおもしろさがあるのでそこまで長さは感じない。しばしば瞑想的で、エレクトロニクスにはエレクトロニクスの詩情があるということも感じる。
●後半は弦楽三重奏という編成が描くマヌリとベートーヴェンのコントラストが鮮やか。マヌリの「ジェスチャー」は抑制的な身振りの小曲が集まったミクロコスモス的な曲集。この後、奏者がそれぞれピリオド楽器に持ち替えてベートーヴェンを演奏したのだが、ベートーヴェンが始まったとたんにがらりと世界が変わる。それまでは巨大なキャンバスを使って自由にあちこちに絵を描いていたのが、ギュッとカンバスのサイズが小さくなって、そこにみっちり稠密な絵が描かれていて、密度が爆発的に高まっているみたいな感じだ。本来なら自分にとってずっとなじみ深いはずのベートーヴェンが異質な世界のように感じられるのがおもしろいところ。アンコールでふたたびマヌリの「ジェスチャー」の終楽章。キレッキレ。
●冒頭でこの音楽祭のナビゲーター役を務める沼野雄司さんのトークがあった。後半途中では沼野さんと野平さんのトークも。これがあるとないでは大違いで、現代作品を多くの人に聴いてもらうには必須なんじゃないかな。沼野さんのトークは明快かつ親切で、大いに助けになった。こういったトークに必要なのは曲目解説ではなく、事前に「目線を与える」ってことなんだなと納得。

November 27, 2024

東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団記者会見

東京シティ・フィル 記者会見
●先週に遡って18日は東京オペラシティで東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団の記者会見。会場が東京オペラシティでどういうことなのかなと思ったら、プレスだけではなく定期会員のみなさんも参加できる会だと知って納得。コンサートホールのステージ上に雛壇が設けられ、われわれは客席に座る方式。写真はコンサートマスターの戸澤哲夫、常任指揮者の高関健、首席客演指揮者の藤岡幸夫の各氏。ほかに志田明子楽団長、星野繁太事業部長が登壇。楽団創立50周年を迎える2025/26シーズンのラインナップが発表された。東京オペラシティの定期演奏会6公演とティアラこうとうの4公演、それと26年の改修の影響でオペラシティ定期の回数が減ることもあり、サントリーホールで50周年記念特別演奏会が開かれる。
●定期演奏会の目玉となりそうなのは、9月の高関健指揮によるヴェルディ「ドン・カルロ」演奏会形式。歌手陣は妻屋秀和、小原啓楼、上江隼人、大塚博章、木下美穂子、加藤のぞみ。高関にとって「ドン・カルロ」は、かつてベルリン留学時にカラヤンの指揮で聴いた思い出の作品。音楽に集中できる演奏会形式でヴェルディの真髄を聴いてほしいと語る。またサントリーホールの特別演奏会は、26年2月にマーラーの交響曲第6番「悲劇的」と同3月にマーラーの交響曲第2番「復活」と大作が並ぶ。藤岡幸夫はヴォーン・ウィリアムズのカンタータ「我らに平和を与えたまえ」他。
●戸澤コンサートマスター「東京シティ・フィルの音作りの基本は飯守泰次郎時代に築かれた。現在は若手が増えてきて、上昇気流に乗っている。ルーティーンに陥らず、みんなで音楽をつくっている。いちばん気を付けているのは、室内楽的に音楽をつくること。50年はオーケストラの世界では若輩者かもしれないが、そのなかで世代交代もある。新しいチャレンジをしながら、音楽面での足腰を鍛えていきたい」

November 26, 2024

サイモン・ラトル 2024年バイエルン放送交響楽団日本公演 記者懇親会

サイモン・ラトル ニコラス・ポント事務局長 2024年バイエルン放送交響楽団 記者懇親会
●25日昼、ホテルオークラでサイモン・ラトル&バイエルン放送交響楽団2024年来日記者懇親会。ラトルの記者会見はこれまでにも何度か出席しているが、バイエルン放送交響楽団の首席指揮者としての登場はもちろん初めて。楽団のニコラス・ポント事務局とともに登壇。密度の濃い会見だったので、印象に残った事柄をいくつか。ラトル「バイエルン放送交響楽団を初めて聴いたのはリヴァプールでクーベリックが指揮した公演。そのオーケストラでいま自分が首席指揮者を務めている。これは大変光栄なことだと思っている」「このオーケストラには偉大なドイツ・オーストリア音楽の伝統がある。同時に現代音楽の分野でも高い技術を持ち、数々の新作を初演してきている。ガット弦で演奏してみようというクレイジーなアイディアも受け入れてくれる。こんなに好奇心旺盛なオーケストラを好きにならずにはいられない」。ポント事務局長からもラトルとオーケストラは「相思相愛の関係」といい、ヤンソンスの逝去、パンデミックといった辛い時期を乗り越えて、ようやく来日できたことを喜んでいた。
サイモン・ラトル
●前夜がミューザ川崎でのブルックナーの交響曲第9番だったので、質疑応答ではこの話題が中心。ラトル「ミューザ川崎はヤンソンスにとっても私にとっても世界でいちばん好きなホールのひとつ。いつもツアーではミューザ川崎で最高の演奏ができる。それはお互いの音が聞こえるから。同じことはボストンのシンフォニーホールでも起きる。われわれにとってホールは楽器のひとつ。だからホールが変わればおのずと演奏も変わる」
●ラトル「私がもっとも尊敬するブルックナー指揮者は97歳のブロムシュテット。彼ほどブルックナーを理解している指揮者はいない。それは古楽や教会音楽を知悉しているからだろう」「ブルックナーの交響曲第9番では、第4楽章補筆完成版と(今回のように)第3楽章までの演奏のどちらもあり得る。本来であればこの曲は交響曲第8番と同様の巨大な交響曲であるが、シューベルトの『未完成』のように第3楽章の終わり方もよいと思っている。どちらがよいのか、聴衆の間で今後も議論が続くだろう。第4楽章を聴いて、すごく変で尖がっているという人がいるが、それは第3楽章までも同じであって、単に慣れているに過ぎない。慣れれば第4楽章を受け入れられるようになる」
●ラトルは「心のなかでは35歳なのに、日本に来るようになってから40年以上経っていることに驚く」と語っていた。なんだか納得。フレッシュでオープンなマインドを失っていない。

November 25, 2024

サイモン・ラトル指揮バイエルン放送交響楽団のブルックナー他

サイモン・ラトル バイエルン放送交響楽団
●24日はミューザ川崎でサイモン・ラトル指揮バイエルン放送交響楽団。全席完売。前回はロンドン交響楽団の音楽監督として来日していたラトルが、バイエルン放送交響楽団の首席指揮者として来日。ベルリン・フィルの後のキャリアがこんなふうに続くとは。プログラムはベートーヴェンのピアノ協奏曲第2番(チョ・ソンジン)、ブルックナーの交響曲第9番(コールス校訂版/3楽章)。チョ・ソンジンを聴いたのはかなり久しぶりだけど、ショパン・コンクールの優勝以後、大ピアニストへの道を着々と歩んでいるのだなと実感。風格と機敏さを兼ね備えたベートーヴェンで、彫りの深い表現だけど、決してロマンに傾かない。澄明な音色や繊細な弱音表現に加えて、確たるダイナミズム。オーケストラの編成は小ぶりだが音に厚みがあり、強靭でシャープ。ピアノと指揮とオーケストラがひとつになって音楽を紡ぎ出しているといった様子。ソリスト・アンコールは意外というか、納得というか、ウィーン時代初期のベートーヴェンの師であるハイドンのピアノ・ソナタ第53番ホ短調(第34番 Hob. XVI:34)の第3楽章。この曲、少しシューベルトっぽい(順序は逆だけど)。
●ブルックナーではバイエルン放送交響楽団が底力を発揮。豊かで重厚な響きがあまりにすばらしくて聴き惚れてしまう。オーケストラ芸術の最高峰といいたくなる水準。厚みがあっても、ラトルのブルックナーは推進力があり、もっさり感ゼロ。凛々しいブルックナーで、深遠ぶらないのが吉。ラトルは以前、ベルリン・フィルでこの曲の第4楽章補筆完成版をとりあげていたけど、今回は第3楽章のみ。とはいえ、もはやこの曲の第3楽章を聴いて、「平安の内に終わった」と感じることは難しい。終結部の前の不協和な叫びは壮絶。この混沌はその先に続くべき楽章の存在を強く求めている。演奏が終わると、満席のミューザに完璧な静寂が訪れた。ラトルが腕を下ろしてから大喝采に。カーテンコールで出てきたラトルが「えっと、このままじゃナンなんで、第4楽章補筆完成版をアンコールでやっちゃいます!」って言わないかな~と妄想したが、もちろんそんなことはありえない。現実のラトルは聴衆とホールを称えるような仕草をくりかえした。団員退出後も拍手は止まず、ラトルのソロ・カーテンコールに。忘れがたい一夜。

November 22, 2024

ディマ・スロボデニューク指揮NHK交響楽団のプロコフィエフ、ストラヴィンスキー他

ディマ・スロボデニューク NHK交響楽団
●21日はサントリーホールでディマ・スロボデニューク指揮NHK交響楽団。この秋の「名前が覚えられない気鋭の指揮者」シリーズ第3弾(と、勝手に設定。第1弾はアラン・アルティノグル、第2弾はアンドレス・オロスコ・エストラーダ)。プログラムはチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲(ニキータ・ボリソグレブスキー)、プロコフィエフのバレエ音楽「石の花」より「銅山の女王」「結婚組曲」、ストラヴィンスキーの3楽章の交響曲。指揮者もソリストも長身痩躯。そしてソリストが指揮者よりもさらに覚えられない名前だった……。ニキータ・ボリソグレブスキー。10回くりかえしても覚えられる自信がない。
●前半、そのボリソグレブスキーは颯爽として洗練されたチャイコフスキーを披露。ロマンや土の香りは控えめ。オーケストラも引きしまったサウンドで雄大。ソリスト・アンコールはバッハの無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番のサラバンド。後半はあまり演奏されないプロコフィエフの「石の花」とストラヴィンスキーの3楽章の交響曲の組合せ。プロコフィエフのバレエ音楽といえば「ロメオとジュリエット」や「シンデレラ」が人気曲だけど、比べると「石の花」にはキャッチーなメロディが乏しいということなのか。バレエのプロローグに相当する「銅山の女王」は、むしろ交響曲に近いプロコフィエフのワイルドなテイストを楽しめる。それに比べると「結婚組曲」は職人芸的というか、やや穏健な作風。オーボエのソロが圧巻。ストラヴィンスキーの3楽章の交響曲は整然としてスマート、さすがのカッコよさ。新古典主義的な軽快さだけではなく、重量感も。こちらのほうが「石の花」より少し前に書かれているわけだけど、いつまでも新鮮さを失わない曲。
●この日、なにを勘違いしたのか、会場がNHKホールだと思い込んでいて、原宿駅を出て代々木公園に入るところまで歩いてから、「はっ!」と気がついた(気づくのが遅すぎ!)。「オ、マイガッ!」と心のなかで絶叫し、猛ダッシュで引き返して、地下鉄の明治神宮前駅に直行。最短ルートをあれこれ検索しながら銀座線に乗り換えて溜池山王駅からサントリーホールに向かって、大汗をかきながら開演に間に合ったのだった。いやー、どちらの会場もあり得る金曜日ならともかく、サントリーホールに決まっている木曜日にまちがえるって、どういうことなの? ふつう、まちがえないでしょ。っていうか、会場まちがい、今までに何回やってるの。まったく自分を信用できない。

November 21, 2024

新国立劇場 ロッシーニ「ウィリアム・テル」(新制作)

新国立劇場 ロッシーニ「ウィリアム・テル」
●20日は新国立劇場でロッシーニのオペラ「ウィリアム・テル」(新制作)初日。日本初の原語舞台上演。序曲だけはあまりに有名だが、長大なグランドオペラとしての全貌を初めて目にすることに。長い作品だとは聞いていたが、吟味の上のカットも施され、上演時間は4時間35分ほど(休憩30分×2回込み)。初めて見る新鮮さもあってか、体感的には意外と長さを感じず。ヤニス・コッコスの演出、美術、衣裳。大野和士指揮東京フィル。
●まず、冒頭の序曲が驚き。コンサートではまるで小交響曲のようなスペクタクルとして鳴り響くが、ピットで演奏されるとぜんぜん印象が違っていて、これは軽やかな幕開けの音楽なのだと実感。序曲の間にすでに演技が始まる方式。ストーリーは重い。ハプスブルク家の圧政下でスイスの民衆が自由を求めて戦う物語であり、そのスイスの英雄が弓の名手であるウィリアム・テル(ゲジム・ミシュケタ)。抑圧する側のボス、悪代官役が総督ジェスレル(妻屋秀和)。つまり、これは「スター・ウォーズ」でいえば、ジェダイの騎士と帝国軍の戦いで、テルとジェスレルの争いが中心となって物語が動くのかなと思いきや、そうじゃないんすよ! 軸となるのはスイス側の長老の息子アルノルド(ルネ・バルベラ)。彼はひそかにハプスブルク家の皇女マティルド(オルガ・ペレチャッコ)と愛し合っているというロマンスが設定されているのだ。しかしアルノルドは父親を悪代官側に殺されてしまう。愛をとるか、父の敵を討つか。そんな葛藤が描かれる。でも、全体のハイライトシーンは、やっぱり息子の頭に載ったリンゴをテルが弓で射る場面になる(ちなみに弓といってもアーチェリーではなくクロスボウのほうだ)。まあ、テルの話だけだとロマンス要素が皆無になってしまうので、オペラとしてはアルノルドとマティルドに焦点を当てるしかないのか。実際、音楽面ではこのふたりが肝。複焦点的なドラマになっていて、そこがぎこちないともいえるし、おもしろいともいえる。
●ロッシーニの音楽は聴きどころ満載。このオペラ、合唱が大活躍する。強力な合唱団を持つ新国立劇場にふさわしい。バレエのシーンもふんだんにあって、娯楽性が高い。重唱もたくさん。歌手陣ではアルノルド役ルネ・バルベラの甘く軽やかな声が印象的。ペレチャッコのマティルドは格調高い。ゲジム・ミシュケタのテルも英雄らしい堂々たるテル。遠目だとテルとアルノルドが似ていて最初は少し混乱した。テルの息子ジェミの安井陽子が秀逸。少年にしか見えない。オーケストラは力まず、清爽な響き。
●以下、演出内容に触れる。ヤニス・コッコスの演出はこの物語を現代に通じるものとして描く。モダンで暗いトーンの抽象化された舞台で、ハプスブルク家の軍人たちは黒ヘルメットを被り、容赦のない暴力性を誇示する。本来のグランドオペラでは風光明媚なスイスを描いたパノラマや民族衣装のダンスが見物だったのかもしれないが、ここにあるのは現実の悲劇の反映だ。実際、だれもが知るテルのエピソードは残忍そのものではある。息子の頭にリンゴを載せて、それを父に射させるのだから。ここには人間性のかけらもない。第3幕のバレエシーンでは総督ジェスレルがスイスの民衆に踊りを強要するわけだが、支配者である男のダンサーたちが、被支配者である怯えた女のダンサーたちを相手にする。現代ならもっと直接的な描写もあり得るのだろうけど、これでも十分に心が凍り付く。最後に映像で投影されるのは、爆撃を受けたと思しき廃墟だった……。一方で、ロッシーニの音楽はどこまでもロッシーニで、恐怖や憎悪を描く場面ですら優美さを失わないのだが。
●あっ、そうそう、有名な序曲のおしまいの「スイス軍の行進」、あれは本編に出てこないんすよ! 知ってた? あのギャロップで華やかな幕切れになったりしない。その代わり、おしまいの場面では本当に崇高な歓喜の音楽が奏でられる。やっぱりロッシーニって、こうだよなーって思う。フォースの暗黒面に堕ちない。

November 20, 2024

中国vsニッポン@ワールドカップ2026 アジア最終予選

●18日、東京オペラシティで東京シティ・フィルの記者発表会へ。2025/26シーズンラインナップが発表された。その様子はまた後日改めて詳しく書くとして、ひとまず年間パンフレット(PDF)にリンク。
ニッポン!●で、19日夜はW杯アジア最終予選のアウェイ中国戦。先日のインドネシア戦から中三日となるアウェイ2連戦。森保監督は例によって大幅に選手を入れ替えてきた。GK:鈴木彩艶-DF:瀬古歩夢、板倉、町田-MF:遠藤、田中碧-伊東(→橋岡大樹)、久保(→前田大然)、南野(→鎌田)、中村敬斗(→三笘)-FW:小川航基(→古橋)。
●ホームでは7対0で勝った相手だが、アウェイとなるとまったく別の展開になる。序盤からニッポンはボールを持っても、ビルドアップがうまくいかない。選手の流動性が足りないのか、ウィングバックにボールを出しても、そこからボールを運ぶ手段がなく、下げるだけ……といった場面が多く、20分過ぎまでシュートなし。イバンコビッチ監督率いる中国は4バック、3ボランチの形で非常に組織的な守備。なんだかボールの出しどころがないな……と思っていたが、どうやら中国はニッポン対策として両サイドのタッチラインを引き直してピッチを狭くしていた模様。道理でいくらボールを横に動かしてもディフェンスが素早く付いてくるはずだ。なんという策士。
●が、そのおかげなのか、なんと前半にコーナーキックから2点もゴールを獲れてしまった。39分、久保のキックにマークを外した小川が頭でビシッと合わせて先制点。さらに前半終了間際の51分、伊東のキックにニアで町田がそらしてファーでフリーになった板倉がヘディングで2点目。これは練習通りの形か。あまりコーナーキックで点を獲るタイプのチームではないと思っていたが、よもやの2連発。それはまあ、ピッチが狭ければコーナーキックの威力と精度は増すわけで、まさに「策士策に溺れる」。
●しかし後半3分、ニッポンのディフェンスが中国に詰め切れず、リンリャンミンが1点を返す。これで一気に中国の勢いが増すところだったが、後半9分、久保とのコンビから伊東が抜け出てペナルティエリア右から逆サイドに狙いすましたクロスを送って、フリーの小川がゴール。中国 1対3 ニッポン
●中国はコーナーキックの場面で、キーパー鈴木彩艶を囲むように選手が密集する謎作戦。満員電車作戦と名付けたい。これ、もし効果あるならみんなマネすると思うんだけど、どうなんでしょね。おもしろそうなんだけど。
●森保監督の超攻撃的布陣、攻めてるときはいいけど、守りに回ると両ウイングバックにフォワード調の選手を使う意味がなくなる……というのはだれもが気にしているところだけど、後半途中から伊東に代わって守備的な橋岡大樹が入った。攻撃力は落ちるけど、チームは落ち着く。で、そうなると右ウイングバックだけが下がり目になるので、ほとんど4バックみたいな形になるんすよね。この形は汎用性が高いかも?
●インドネシアがホームでサウジアラビアを破った(!)。インドネシアのオランダ化は成功している。バーレーンとオーストラリアは引分け。グループCはニッポンが勝点16で独走し、残りのすべての国が勝点7と6の間にひしめく大混戦になった。

November 19, 2024

インドネシアvsニッポン@ワールドカップ2026 アジア最終予選

インドネシア●15日、N響定期の後、帰宅してからW杯アジア最終予選のインドネシアvsニッポン戦をDAZNの見逃し配信で。今晩、アウェイ中国戦があるので今さらではあるが、振り返っておこう。ちなみに今回、DAZNは無料配信を敢行、テレビ放送はなし。はたしてこれでいいのかどうか……。DAZNの無料配信もFanZoneというオンラインチャットで交流しながらゲストといっしょに観戦するタイプの別チャンネルだったようで、ストレスがたまりそう。最初、まちがえてそちらにつないだのだが、有料配信に切り替えたらふつうの中継でほっとした。DAZNはFanZoneを推したいみたいなのだが、もしあれを強制的に見せられるのだったらもう契約しない。
●で、試合だが、ワールドカップ出場に向けてオランダ系帰化選手をずらりとそろえたインドネシアは壮観。11人中9人が帰化選手だったかな。オランダのAZでプレイ経験のある菅原由勢は「帰化選手はほぼ全員知っている」そうなので、オランダの国内リーグ選抜みたいなチームなのだろう。ぱっと見、アジアというよりヨーロッパのチーム。なかにはオランダU21代表経験のある選手もいるとか。今の時代、これはなんの不思議もない話ではある。先のワールドカップでオランダ代表がスリナム系の選手ばかりで白人選手がずいぶん少ないなと思ったが、その一方でインドネシア代表がオランダ系の選手ばかりになっていたとは。
●試合結果は一方的で、インドネシア 0対4 ニッポン。序盤は楽な展開ではなく、雨と重い芝に苦労した模様。スピード感のあるパス回しができない。インドネシアを後押しするファンの声援も独特で、大したチャンスでなくてもドッとスタンドが明るく湧きあがって、やりにくそう。インドネシアがニッポンのミスを突いて2度ほど先制点を奪うチャンスがあった。鈴木彩艶のファインセーブあり。シン・テヨン監督率いるインドネシアは、自分たちがボールを持てばしっかりとパスをつないでくるチーム。それがニッポンにはむしろ助かったところがあって、意外とオープンな展開になる。前半35分、鎌田が小川に出したパスを相手ディフェンダーがオウンゴール、続いて40分に左からの折り返しを走り込んだ南野がダイレクトでシュート、左ポストに当たってゴール、後半4分、相手のキーパーのミスから守田がゴール。
●圧巻は後半24分、途中出場の菅原のゴール。右サイドを抜け出て、ゴール前に侵入、クロスを入れると見せかけて、キーパーの肩口を抜けるシュートを豪快に蹴り込んだ。あそこでニアの上を狙って、あんなに強いシュートを打てるとは。今、森保監督が採用している3バックにはサイドバックというポジションがないので、菅原や長友には出番がなかなか回ってこない。3バックの右ウィングバックとなると、菅原は堂安や伊東と同じポジションを争うことになってしまう。もっともこのポジションで本職なのは菅原のほうだが。
●ほとんどオランダの選手だらけのチームを相手に、ニッポンが格上のチームとして戦っていることに不思議な気分になった。GK:鈴木彩艶-DF:橋岡大樹、板倉、町田-MF:遠藤、守田-堂安(→菅原)、南野(→前田大然)、鎌田(→旗手)、三笘(→伊東)-FW:小川航基(→大橋祐紀)。負傷の谷口の代役は橋岡。大橋祐紀はイングランド2部のブラックバーンで大活躍中、28歳にして代表デビュー。

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飯尾洋一(Yoichi Iio)

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