ゼレンカ:トリオ・ソナタ集 ホリガー、ブルグ(ob)他 [ECM]
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1999年から2000年へ。だから、この千年紀を振り返るものを選ぶのだ、というのはウソ。フツーに選んだって、最近1000年以内に書かれた作品しか挙がらないっての(笑)。 まずは最も多くの回数、CDプレーヤーに乗せられたという意味でベストの一枚を(いや二枚組だ)。ホリガー&ブルグ(オーボエ)、トゥーネマン(ファゴット)、ツェートマイヤー(ヴァイオリン)、ジャコッテ(チェンバロ)らによる、ゼレンカのトリオ・ソナタ集(ECM)。すなわち、モダン楽器による演奏。ホリガーらによる同曲旧録音になじんでいる方とは正反対の印象かもしれないが、ワタシ的にはこれを重厚で、たっぷりと歌った音楽と感じてしまう。なので、リッチでありゴージャスなバロック。ドレスデンの宮廷オーケストラの名奏者のために書かれたこの傑作を、現代の名ソリストで楽しむべし。全編に漂う鄙びた雰囲気も吉。 圧倒的なカッコよさに打ちのめされたのが、ビオンディ/エウローパ・ガランテによるバッハのヴァイオリン協奏曲集(Virgin)。おなじみのイ短調やホ長調じゃなくて、原典が失われちゃってるのをチェンバロ協奏曲から復元したやつが入ってるんだけど、とにかく切れ味鋭くてカッコいい。特にニ短調(というのはチェンバロ協奏曲でいうと第1番ってヤツだ)。あの曲はバッハの中でもカッコよさ度で最高クラスだと思うんだが、ヴァイオリンでやってもメチャクチャいい(唯一、3楽章のカデンツァんところはチェンバロみたいにドロドロと渦巻くような情熱的な感じにはならないけど、あとは文句なし)。ト短調(チェンバロ協奏曲ではヘ短調の曲)のラルゴの有名な旋律もすばらしい(アリオーソとか呼ばれるヤツね)。あれってチェンバロよりヴァイオリン向きの旋律だもんな。ドキドキさせられるような躍動感を満喫。 リヒャルト・シュトラウスのピアノ曲を収めたシュテファン・ヴラダーの一枚もお気に入り(KOCH SCHWANN)。いずれの曲も作品番号一桁の初期作品。シューマンっぽくって、シューベルトあるいはブラームスが少し混ざったような、ドイツ・ロマン派エピゴーネンではあるんだけれど、単なる習作として扱うのはもったいない抒情あり。グールドをはじめ、シュトラウスのピアノ曲にはこれまでも録音は少ないながらもそれなりにあったわけだが、オーソドックスで録音の新しい一枚として大歓迎。 クリスティ/レザール・フロリサンのモーツァルトの歌劇「後宮からの誘拐」もよかったなあ。非オペラ者なので歌手のことは分からず。モーツァルトの器楽作品を楽しむのと同じように楽しんだのだ。トルコ趣味的にはさらなるバカ度炸裂を期待する人もいるかもしれないけど。 ダニエル・ハーディングのベートーヴェン/序曲集の衝撃はDISC WOW!参照。 尖りめなところでは、アンスネスのピアノ、パーヴォ・ヤルヴィ/バーミンガム市響のショスタコーヴィチとブリテンのピアノ協奏曲(EMI)。ショスタコのほうは例のトランペットとピアノの二重協奏曲、トランペットはハーデンベルガー。それぞれ作曲者20代に書かれた作品を颯爽と演奏してくれる。オマケに小品、エネスコの「伝説」が入ってるんだけど、こっちは一転してしんみりとトランペットとピアノによるカンタービレな音楽。 最後に、本気半分シャレ半分で、ついにまとまったベリオのセクエンツァ集を(DG)。アンサンブル・アンテルコンタンポランの猛烈技術度高い人たちの演奏。3枚組14曲の各種ソロ楽器(&ヴォーカル)のための反復進行。1958年にスタートし現代に至るまでの同作品群は、前衛音楽のマイルストーンであり、1900年代を締め括るに相応しい墓標、じゃないや(笑)、記念碑、のはずである。きっと。 (99/12/23) |